相続で戸籍が必要な理由|まず知っておきたい戸籍の種類

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相続で戸籍が必要な理由と、まず知っておきたい戸籍の種類

相続において、法の規定にもとづき誰が相続人となり得るかは、出生から死亡に至るまでの身分関係を時系列に沿って明確に記した公簿である戸籍にもとづき判断されます。

そのため、被相続人にかかる一連戸籍の正確な取得・整序が重要です。

戸籍の役割とは?被相続人の死亡と法定相続人を疎明する

被相続人がいつ出生し、誰との間で子をもうけたか等、婚姻事実の有無を含め、時系列に沿った身分関係の全貌を明らかにするには、出生から死亡に至るまでの一連の戸籍を確認する必要があります。

具体的には、被相続人の死亡の事実が記載された戸籍(当該被相続人が除籍されているもの)から1つ1つ遡って出生(遅くとも15歳)まで揃え、整理します。

戸籍謄本と戸籍抄本の違い|個人と全部、相続ではどっちが必要?

被相続人の一連戸籍については、戸籍・除籍・改製原戸籍とも、実務上は謄本の取得が望ましいものです。抄本では請求対象者にかかる記載以外は省略されるため、子などの相続人と思料される者の現在の存否等を確認するにあたって必要となる本籍地・筆頭者等の情報を読み取ることが難しくなります。

戸籍全部事項証明とは?戸籍謄本・証明書の名称を整理

明治以来、戸籍は身分関係を示す公簿として法の規定にもとづき様式が整備され、手書きもしくは活字で記載のうえ原本が保存されてきました。写しを交付請求するにあたっては、現代の複写技術がなかった当時、謄写方式で作成・交付がなされ、謄写範囲の違いにより、原本すべてを謄写したものを謄本、原本のうち必要な一部のみを謄写し残余を省略したものを抄本とされました。

複写技術の進歩や電算化がなされた現在でも、一般には謄本や抄本との呼称で通用していますが、現在の電算化戸籍においては、戸籍全部事項証明書や戸籍一部事項証明書と呼ぶのが正確です。

除籍謄本・改製原戸籍謄本とは?除籍と改製原戸籍を見分ける方法

戸籍に記載された者にかかる届出がなされたことにより戸籍に変動が生じ、結果として当該戸籍内に記載される者がすべていなくなった場合、及び、戸籍そのものが他の本籍地に丸ごと転籍した等の場合、従前の戸籍について、以後は除籍として扱います。除籍とされた以後の身分関係の変動等は当該除籍には記載されず、除籍とされるまでの身分関係の変動等を証するため、保存期間(原則150年)の間、保存されます。除籍の内容を確認するために、請求に基づき交付されるのが除籍謄本です。

現在の戸籍全部事項証明書では、戸籍事項欄に戸籍消除の記載とともに消除日が記載され、最下部欄外に除籍である旨の記載がなされるため、その記載を以て除籍であること及び牽連が確認できます

他方、戸籍制度が改められ、新たな戸籍様式が導入されると、以後の身分関係の変動等は新戸籍に記載され、従前の戸籍は改製原戸籍として扱います。改製原戸籍とされた以後の身分関係の変動等は当該改製原戸籍には記載されず、改製がなされるまでの身分関係の変動等を証するため、保存期間(原則150年)の間、保存されます。改製原戸籍の内容を確認するために、請求に基づき交付されるのが改製原戸籍謄本です。

なお、現在の戸籍全部事項証明書では、戸籍事項欄に戸籍改製の記載とともに改製日・改製事由が記載されており、電算化にかかる改製原戸籍においては、縦書き書式の冒頭欄外に改製原戸籍であることの注記とともに改製事由が、最後部欄外に改製原戸籍である旨の記載がなされるため、その記載を以て改製原戸籍であること及び牽連が確認できます。

戸籍の記載から出生・婚姻・離婚・転籍を読み解く

現在の戸籍全部事項証明書は電算化に伴い改製された、A4版横書きのもので、冒頭に本籍地と戸籍事項欄がおかれ、以降は戸籍に記録されている者ごとに身分事項欄がおかれます。身分事項は出生から死亡に至るまで、身分事項の種別ごとに配置された身分事項欄のカラム内に記載されていきます。

出生の場合、出生日・出生地・届出日・届出人が、各記載されます。

婚姻の場合、婚姻で氏を改める者の従前戸籍の身分事項欄には、婚姻日・配偶者氏名・受理者・新本籍・称する氏が、入籍した戸籍の身分事項欄には、婚姻日・配偶者氏名・従前戸籍が、各記載されます。

離婚の場合、身分事項欄には、離婚日・配偶者氏名が、離婚で除籍される者の従前戸籍には前記に加え新本籍が各記載され、離婚後の新戸籍の身分事項欄には、離婚日・配偶者氏名・従前戸籍が各記載されます。

転籍の場合、従前戸籍の戸籍事項欄には、転籍日・新本籍が、転籍後の戸籍の戸籍事項欄には、転籍日・従前本籍が、各記載されます。

このように、1つの変動があれば前後・新旧で2つの記載が存在し、変動の前後で対になった記載がなされることから、戸籍の記載内容は、時系列で新しいものから古いものへ遡及調査していく際の有力な情報となります。

相続に必要な戸籍はどこまで?取得する範囲を確かめる

被相続人の死亡時に配偶者がいれば、そのものは必ず相続人となります(配偶者相続人)。同様に、子がいれば配偶者とともに相続人となります(第一順位相続人)。

子がおらず、被相続人の父母がいればその者が、父母がいなければ被相続人の祖父母が、配偶者とともに相続人となります(第二順位相続人)。

祖父母もいなければ、被相続人の兄弟姉妹が配偶者とともに相続人となります(第三順位相続人)。

このように、様々な相続形態がある中で、直面している相続の形態により戸籍取得範囲が定まります。蓋し、戸籍取得の本旨は相続人範囲の確定に尽き、戸籍取得範囲とは相続人範囲に他ならないからです。

被相続人の戸籍は出生から死亡まで必要|本籍地が変わっても全部集める

被相続人については、出生から死亡まで(戸籍調査は逆順で死亡から出生へ遡る)必要があります。その本旨は、相続人範囲の確定です。相続時の婚姻有無、養子を含む子の有無、子が先死亡の場合に代襲相続人となる直系卑属(孫・ひ孫等)の有無は、被相続人の一連戸籍を調査することで疎明できるからです。数度の改製を経ている場合も改製原戸籍を、転籍があれば除籍も確認し、1つ1つ丁寧につなげていきます。

どうしても辿れない戸籍(戦争や災害により所管庁舎が壊滅等し、戸籍の再製もかなわない場合)もありますが、その場合は当該所管庁から戸籍を発行できない旨の証明書(行政証明)を取得し、戸籍に代えて処理することは実務上あります。

もっとも、被相続人につき概ね15歳程度までの戸籍は取得することが望ましいものです。子の有無を確認するうえで、人間の生殖能力との関係から、子の記載が戸籍上確認できるのは概ね15歳以降とされているからです。

相続人全員の戸籍謄本とは?どうやって用意し、いつの戸籍を取得する?

相続人を調べ、範囲を確定する本旨は、遺産分割協議の当事者適格の判断資料とすることです。その限りにおいて、必要最小限の調査は必要となります。また、相続の形態ごとに相続人範囲は異なるため、形態に沿って相続人の現存を疎明できるよう、相続人全員の戸籍を取得する必要があります。

配偶者と子が相続人となる形態では、被相続人戸籍とは別の戸籍にある子につき、被相続人戸籍での分岐から現在までを辿ります。

また、前述のとおり、遺産分割協議の当事者適格を判断するために、現時点で戸籍の記載(生存証明)が必要となります。

配偶者と子が相続人の場合|子供の戸籍はどこまで必要?

配偶者と子が相続人となる場合、被相続人戸籍から出た子については、被相続人戸籍からの分岐より現在に至るまでの戸籍変遷を辿る必要があります。

子については、被相続人の死亡前に子が亡くなっていた場合は、直系卑属が代襲して相続することとなるため、被相続人の孫やひ孫が配偶者とともに相続人となり、当該孫やひ孫の現在戸籍までを辿ります。

なお、相続の文脈においては、物理的に子はいるもの相続人廃除がなされ、もしくは相続欠格に該当するケースでは代襲相続が発生するため、子が先死亡の場合と同視のうえ、同様に孫やひ孫の現在戸籍までを辿ります。

他方、子が被相続人の死亡後に亡くなっている場合は、観念上、子の相続財産に被相続人の相続財産(未分割)が含まれることから、被相続人の遺産分割協議には、子の相続人(子の配偶者や被相続人の孫)が加わることとなるため、それらの者の戸籍まで辿ることとなります。

子がいない場合|父母・祖父母など直系尊属の戸籍と死亡の確認

被相続人が若くして亡くなる場合が代表的ですが、被相続人に子などの直系卑属がいない場合は、被相続人の父母が相続人となります。父母ともいない場合は、祖父母(父方・母方で計4名)が相続人となります。

直系尊属を辿ることとなるこの形態では、被相続人の死亡前に第二順位者(父母・祖父母)が亡くなっていることも多く、その旨の確認が次順位である第三順位者の相続権発生根拠となるため、死亡の事実確認が重要です。

なお、相続の文脈においては、物理的に子はいるもの相続放棄がなされたケースでは、子がいない場合と同視のうえ、同様に第二順位者の調査、第三順位者の相続権発生を検討します。

兄弟姉妹や代襲相続人がいる場合|相続関係を証明する戸籍の範囲

第二順位者までが不存在であることの確認を以て、第三順位者の相続を検討します。

この形態の相続における戸籍調査は、通常、大変ボリュームの大きな調査となり、作業量・時間・費用とも、配偶者・子のみの形態と比して3倍程度を要します。

なぜなら、相続放棄を含め、第二順位者までに相続人がいないことの確認する必要から、被相続人の第二順位相続人までの現在の存否を固め、生存する相続人(代襲相続人を含む)となり得る者が相続放棄申述をしているか否かを、被相続人除票記載の住所を管轄する家庭裁判所へ相続放棄申述の有無の照会をかけ、相続放棄申述をした相続人にかかる相続放棄申述受理証明書を取得します。

次に、被相続人の兄弟姉妹の存否を疎明するため、被相続人の父・母とも、出生から死亡までの一連戸籍を取得・精査します。

一般には父・母を同じくする者のみを兄弟姉妹と捉えてしまいがちですが、法律上は被相続人の父もしくは母の前婚や婚外での子も被相続人の兄弟姉妹と扱われます。よって、被相続人の父・母とも、出生から死亡までの一連戸籍を取得し、兄弟姉妹(及び不知の兄弟姉妹の不存在)を確認する必要があります。

また、被相続人の死亡より前に第三順位者が亡くなっており、その者に子がいる場合は、当該子が第三順位者を代襲して相続人となります。なお、この場合の代襲は、第一順位者たる被相続人の直系卑属における代襲とは異なり、現在は一代限り(被相続人の甥・姪)とされています。

戸籍の取得方法|本籍地・最寄りの窓口・郵送を使い分ける

直面している相続の事案に応じ、戸籍取得方法を検討します。すなわち、被相続人の出生から死亡に至るまで同一庁が本籍地を管轄している等、本籍地の変動が少ない場合は、当該庁へ出向き一度に戸籍を収集する方が合理的です。

他方、出生時点とその後の変遷及び死亡時点で本籍地所管庁が異なる場合は、往復速達郵便等の適宜の手段で取集の最速化を図ると円滑です。

本籍と筆頭者を確認し、本籍地の市区町村役場へ請求する手順

戸籍は身分関係を証する公簿であり、管理においては本籍地と筆頭者がインデックスの役割を担います。本籍地が判明していても筆頭者が不明であれば戸籍を特定できず、逆も同様です。本籍地所管庁の戸籍担当部署を調べ、申請様式等もダウンロードして記入、窓口もしくは郵送にて請求します。

もっとも、後述の広域交付制度の開始により、最寄りの市区町村窓口で電算化された戸籍・除籍・改製原戸籍の取得が可能となっていますので、利便性は格段に向上しています。

ただし、電算化されていない古い時代の戸籍や、戸籍の附票等は従来通り当該本籍地所管庁へ請求する必要があるほか、一連戸籍の牽連性を保つ収集については高度な検討と熟練を要するため、複雑な戸籍収集作業には不向きかもしれません。

広域交付制度とは?全国の最寄りの窓口で取得できる戸籍と制限

令和6年3月より、電算化された戸籍情報を保有する全国の所管庁がネットワークで結ばれ、情報の確認等の利便が各段に向上しました。

例えば、婚姻の届出に際して本籍地以外の役所窓口へ提出する際、戸籍の添付を求められていたところ、役所窓口にて本籍地保有の戸籍情報を参照することで受理がなされるようになり、添付書類が減ることにより本籍地への請求を観念する必要がなくなりました。

このような、生活上の手続きで添付すべき書類の省略化が進むことは喜ばしく、相続においても、単に被相続人死亡の記載のある除籍を取得したい等、シンプルな請求であれば最寄りの市区町村窓口でシームレスな対応が可能となりました。しかし、相続における戸籍収集の本旨は、戸籍精査を通して相続人範囲の確定にあることに立ち返ると、広域交付制度を上手に活用する余地はあるとしても、それだけで完結することは難しいものと言わざるを得ません。

時代が古くなるごとに、電算化されていないものに遭遇することも考えられ、また、古い時代の手書き戸籍には、判読が極めて困難な事例も多く、一連戸籍の牽連性を保ち過不足なく最短で整える要請を満たすには、やはり専門職の知見や経験に基づく円滑な作業に委ねることが確実と言えます。

また、面識がなく縁の遠い相続人へ通知等を発出する場合は住所の確認を要しますところ、戸籍の附票を取得することで確認可能となりますが、戸籍の附票は従前通り、本籍地所管庁へ請求する必要があり、この点は今後の改善が期待されるところです。

郵送での取得方法|請求書・定額小為替・返信用封筒を用意する

本籍地所管庁の請求様式をダウンロードのうえ、適宜情報を記入、返信用封筒と定額小為替を同封のうえ、本籍地所管庁の戸籍管掌窓口へ郵送するのが一般的です。当事者以外の者が当事者に代理して請求する場合は、当事者からの委任状を取得し原本・写しを同封のうえ、同様に請求します。行政書士等の専門職が職務上の必要に応じ請求する場合は、職務上請求書を使用することが多いです。

定額小為替は戸籍発行手数料の支払いに用いられます。戸籍発行の手数料額は政令で定められており、戸籍全部事項証明書は1通450円、除籍・改製原戸籍は1通750円です。

相続の戸籍謄本はコンビニで取れる?交付対象と自治体の対応に注意

コンビニ交付サービスを利用して戸籍を取得することが可能で、この方式で取得した戸籍は窓口や郵送で取得したものと同じ効力を有しているので、もちろん相続手続きに用いることができます。

サービス自体は各自治体により利用詳細が異なるため、事前の確認が必要です。例えば、利用時間の制限があり、土日は利用できない等の制約があります。その他、サービス実施自治体と本籍地が異なる場合は、事前利用登録を経なければ戸籍発行ができない、そもそも利用者証明用電子証明書(4桁の暗証番号)が搭載されたマイナンバーカードを取得する必要がある、最新戸籍しか発行できない等々、制約が多くありますので、各自治体の情報を確認しておくと円滑です。

過去の戸籍が見つからないときは?転籍先をたどり役場へ問合せる

一連戸籍を遡及請求するにあたり、1つ1つ辿っていくことは前述しましたが、具体的には身分事項や戸籍事項を総合評価して、次に請求すべきもの(現在手持ちのもっとも古い戸籍の1つ前)を特定し、請求します。

具体的には、戦後の民法改正で三代戸籍が禁じられたことにより、以降は婚姻により戸籍が創設されますところ、その旨の記載が戸籍事項欄にあれば、被相続人の婚姻前の戸籍を請求することとなり、その本籍地・筆頭者を身分事項欄から読み解きます。

過去の戸籍が見つからないとのご相談を受けることがありますが、多くの場合は、情報の総合評価において瑕疵があり、正確な情報を読み解けていないものと思われます。

転籍を経た戸籍の場合は、戸籍事項欄にいつ、どこから転籍の旨が記載されており、当該本籍地所管庁へ請求します。稀に、市町村合併や行政区画地名変更により、請求すべき戸籍の所管庁が現在どこか不明なことがあります。このような場合は、本籍地記載の当該地名や行政区画を現在所管しておられるか、架電のうえ確認し対応することとなります。

戸籍を請求するときの必要書類と本人確認

必要書類は各自治体戸籍管掌窓口が指定している請求書様式や、請求すべき戸籍を特定するに有用な参考資料、本人確認書類と手数料になります。

請求・申請に必要な書類|本人との関係を示す戸籍や住民票の写し

戸籍請求が不正・不当な目的でないことを疎明する必要から、被相続人との関係を示す戸籍があれば適法性の確認や戸籍特定の資料として有益です。被相続人と同居されていたのであれば、住民票の写しも有益な資料となります。

窓口の本人確認書類は?運転免許証・パスポートなどの扱いを確認

各自治体の戸籍管掌窓口で具体的な本人確認書類を類型別に開示しており、その情報を確認すると円滑です。一般には、マイナンバーカードや運転免許証等、写真付きの公的身分証明書は1点、それ以外は複数点を組み合わせて疎明する場合が多いです。本人確認資料としてのパスポートの取り扱いは自治体により異なるため、事前の確認を要します。

マイナンバーカードの電子認証はいつ必要?コンビニ交付の条件

コンビニ交付においては、サービス実施自治体所定の方式により交付を求めます。概ね、まずマイナンバーカードの交付を受け事前利用者登録を行い、コンビニのマルチコピー機等で画面表示の手順に従い入力していきます。利用者証明用電子証明書(4桁の暗証番号)は発行請求手順の中で入力を求められます。複数回間違うとロックされ発行できなくなりますのでご留意ください。窓口や郵送請求と異なる用紙ですが、偽造防止処理を施したもので発行されます。

コンビニ交付全般の制限・留意事項は前述のとおりです。

代理人に取得を依頼する場合|委任状と請求できる人の範囲

当事者より委任を受けた代理人は、所定の手続きを経て戸籍請求できます。

委任関係を疎明する資料が委任状です。業として請求手続きを反復継続するものでなければ、専門職でなくとも代理人となれます。戸籍請求においては、その目的の範囲を逸脱するものでなければ、戸籍請求範囲の拡大は可能で、一連戸籍の収集もできます。

他方、業として反復継続し請求手続きを行う場合は、行政書士法違反等の嫌疑をかけられますことにご留意ください。

集めた戸籍を使う相続手続きと提出先

一連戸籍の収集後は、相続手続きに共通して利用できその後の手続きが円滑となる法定相続情報一覧図につき、保管及び作成の申出を法務局へ行います。その際、遺産の種類や関係機関の数に応じ、必要となる通数を確定し申出書に記載のうえ申し出ます。

還付を受けた一連戸籍は、法定相続情報一覧図に加えて提出を求める金融機関等の要請に備え、大切に保管しておきます。

預貯金の解約・名義変更|金融機関が求める相続人全員の書類

相続財産が金融資産の場合、各金融機関の相続部門が定めた所定様式による手続きを要し、必要書類も各金融機関ごとに異なりますが、概ね、必要書類一覧表にまとめられているため、それを参照のうえ提出書類を準備します。相続人全員の書類への自署・捺印に際し、実印での捺印を求められる場合は、各相続人につき印鑑登録証明書を添付します。

遺産分割協議と遺言書がある場合|戸籍の用意はどう変わる?

遺言書があれば、遺言の内容に従い粛々と遺産の帰属を進めますところ、その前提として形式的な有効性を確認する過程を経る必要の有無につき検討します。

すなわち、公正証書遺言の場合は、公証人の厳正なリーガルチェックを経て作成されることから、形式及び内容の適法性は担保されており、その成立に疑義が生じる余地はほとんどありません。

他方、自筆証書遺言の場合は、勝手に開披することは許されず、家庭裁判所での検認手続きを要します。これは、内容を吟味するものではなく、自筆証書遺言の発見時の状態を保全のうえ、全相続人が一堂に会し確認、検認審判書が作成され、以後の手続きにおける根拠資料としての有効性を確認するものです。この検認申出にあたり、全相続人の確定を疎明する必要から、一連戸籍ならびに全相続人の戸籍を収集する必要があります。

また、前述の公正証書遺言においては、遺言発効後の戸籍収集は概ね必要ありませんが、公正証書遺言の内容を策定するにあたり、遺留分を侵害されるおそれのある相続人につき、将来の紛争回避へ特段の配慮を検討する余地があり、その前提として相続人範囲の確定が必要となるため、やはり一連戸籍ならびに全相続人の戸籍を収集して相続人を確定のうえ、遺留分を把握しておきます。

つまり、公正証書遺言、自筆証書遺言とも、収集作業の時期は前後しますが、いずれも戸籍収集は必要となります。

遺言書の検認、相続放棄・限定承認|家庭裁判所へ提出する戸籍と期限

遺言書検認の申立は遺言書発見後すみやかに、相続放棄・限定承認の申述は相続開始を知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に対して行います。相続放棄・限定承認の申述について、熟慮を要するため申述期限の猶予を希望する場合には、申述期間伸長の申立が許されています。

いずれにしても、体感的な期限到来はとても早く、起算点からどれだけ速やかに過不足なく完全な戸籍収集が重要です。

これらの手続きの詳細については、弁護士・司法書士にお尋ねください。

戸籍収集の費用・手数料と、提出時の注意点

戸籍収集では、専門職の手続費用と郵送請求時の郵送料、戸籍発行官署へ支払う政令で金額が定められた交付手数料の合計が費用として必要となります。

戸籍の交付は無料?謄本・抄本・除籍・改製原戸籍の手数料

戸籍の発効には交付手数料の納付を要し、その金額は種類ごとに定められています。現在の手数料は、現在戸籍は謄本・抄本とも1通450円、除籍は謄本・抄本とも1通750円、改製原戸籍は1通750円となっています。

なお、現在戸籍については、自治体によりコンビニ交付の利用で手数料が低くなる場合もあります。

複数の提出先で戸籍が必要なとき|原本、写しの扱い

遺産が1種類のみであることは稀で、通常は金融資産でも複数の金融機関で手続きしますところ、複数の法定相続情報一覧図の交付を受けておけば、複数の金融機関へ同時に手続きをとることが可能で、円滑な手続きに資するものです。

しかし、法定相続情報一覧図のみでは疎明資料として足りないとする金融機関も一部にはあり、当該金融機関に対しては、一式(1セット)のみ収集した一連戸籍を提出するに際し、原本のみを提出してしまうと他の金融機関への手続きに支障が生じ、改めて一式(1セット)を取り直すこととなるため、時間と費用がかかり迂遠です。

このような場合は、戸籍原本の還付を受けられるよう、写しを作成し、原本と相違なき旨の文言を記載し署名捺印(記名押印)して提出することで、原本確認のうえ原本の還付を受けることができ有益です。

戸籍謄本に有効期限はある?提出先ごとの条件を確認

一連戸籍のうち過去の戸籍(除籍・改製原戸籍)については、有効期限とされる発行時期からの時的制限はありません。除籍・改製原戸籍とも、除籍化ないし改製時に記載内容が固定され、以後にその記載内容が変化する余地がないため、発行時期が古くとも利用できます。

他方、現在戸籍や住所関係疎明資料(住民票・印鑑登録証明書、戸籍の附票)については、提出先官署により異なるものの、概ね、発行から3カ月以内のものを提出するよう求められます。

現在戸籍は当事者の事情変更に伴う届出に基づき、その記載内容が変更するのが通常で、その変動を反映したものを求めるとの趣旨です。その厳格度は手続きにより異なり、例えば公正証書遺言の作成時には、発効後1カ月以内の印鑑登録証明書が通常求められます。

相続人を確定できないときの調査と専門職への依頼

相続人を確定できない要因は、戸籍の牽連性を踏まえた収集が難しいことにあります。結果、重要な身分行為を見落として、相続人を確定できないこととなる場合があります。

戸籍がつながらない原因は?改製・転籍・記載の読み落としに対応

戸籍を遡及して請求するにあたっては、戸籍に記載されるに至った理由に着目します。戸籍記載事由が婚姻等の身分関係変動に伴う届出によるものであれば、身分事項欄の本籍記載が遡及すべき戸籍を示しています。

他方、戸籍記載事由が転籍や改製によるものであれば、戸籍事項欄の記載が遡及すべき戸籍を示すこととなります。取得した遡及戸籍との牽連は変動年月日を含め仔細に照合します。

また、祖父や曾祖父の相続など、古い時期に発生した相続で未分割の遺産につき分割協議をする場合等では、必要となる遡及戸籍も当然古いものとなり、昭和改製以前に及ぶことがあります。この場合は、家督相続を検討事項に含める必要があります。

すなわち、戸籍に記載されるに至った事情が父の家督相続に伴う入籍の場合は、父(戸主)の身分事項欄を中心に前戸籍の情報を精査します。これは、日本の戸籍制度の変遷に伴う様式の差異によるものです。日本の戸籍制度は、いわゆる明治5年式戸籍(壬申戸籍)、明治19年式戸籍、大正4年式戸籍、昭和22年式戸籍、そして現在の平成6年式電算化戸籍に変遷してきたところ、各戸籍様式には差異があります。戦後の戸籍に戸籍事項欄が設けられ戸籍事項が一括記載されていますが、それ以前の様式には戸籍事項欄がないため、どの者の身分事項欄を確認すればよいものか、不慣れなため判断に迷うことも多くあります。

その他、古い相続、特に昭和60年より前の相続においては、第三順位相続人の代襲規定について、現在と取り扱いが異なるため注意が必要です。

相続人が多い場合の収集方法|調査の順序と必要書類の整理

専門職が取り扱う場合は、被相続人の出生までの連綿たる戸籍群を本流として、その他分岐した者の現在戸籍までを傍流と捉え、経験則に基づく推測をはたらかせつつ、ほぼ同時進行で収集を進めます。結果として、参照できる情報量が多くなり、時系列のみでなく時的に双方向からの照合ができ、円滑であり過不足なき収集が可能となります。

また、身分証明書写しや返信用封筒の準備等、常時備えておくことで時間費消を低減できます。得られた戸籍の情報を都度整理し、徐々に相続関係図に落とし込んでいくことも円滑な処理に有益です。

行政書士に依頼できる手続

専門職は、受任業務の処理に必要である場合は、適宜の方法で委任者に代わる戸籍の収集が許されています。逆に言えば、業務処理に資する目的(受任業務)がなく戸籍収集のみ行うことは許されていません。

遺言や相続の分野では、自筆証書遺言書作成支援業務や公正証書遺言作成嘱託支援業務を受任すれば、将来の遺留分侵害額請求への対策について検討するにあたり、相続分を有する法定相続人の範囲や数を確定するため、戸籍収集による確認を進めます。

また、遺言書がなく発生した相続における遺産分割協議書作成業務や、法務局への法定相続情報一覧図の作成及び保管の申出を業務として受任すれば、法定相続人の範囲や数を確定する必要から、同様に戸籍収集による確認を進めることとなります。

期限のある手続きから逆算し、早めに戸籍収集を始める

相続に関し期限の定められている手続きは意外に多く、相続放棄・限定承認の申述が代表的ですが、その他にも相続税が賦課される場合の相続税の申告や、不動産をお持ちの方であれば、権利登記の一種でありながら近年義務化された相続登記において対応期限が定められています。

相続開始後2年以内に、などの期限につき、長期の猶予でありながら期限を徒過し、もしくは、期限が定められていることを知らず、手続きを懈怠するケースもあります。

多くの手続きでは、期限徒過により権利を喪失する、もしくは、行政罰としての過料が課されており、とるべき相続対応を相続財産の種類ごとに精査のうえ、厳格に期限管理する必要があります。

猶予期間内に円滑かつ正確に必要十分な戸籍群を漏れなく収集、整序することは、簡単なことではありませんので、早め早めの対応や専門職への委任を検討されると有益です。

人生で遭遇する頻度が低く、それでいて失敗したくない重要な手続きについては、ご自身で時間をかけて検討されるよりも、専門家に聞いた方が早くて確実なことも多いものです。事案の見通しが知りたい、課題解決の糸口を見つけたい、との相談でも構いませんので、一人で悩まれている方はお気軽にご相談ください。

「大手前ノーベル行政書士事務所のホームページ」

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