行政書士業務に関するコラムを公開するにあたり、このブログを開設しました。
日々の業務と積み重ねた経験で得られた気づきを、折々にお伝えできればと思います。
このブログでは、弊所取り扱いの各分野のうち、皆様のおかれた課題の解決に資するよう、基幹となる業務の基礎知識を制度の本旨にもとづき概説します。その後、各論として取り上げたテーマを解説し有益な情報を提供することを以て、健全かつ円滑な課題解決の一助となることを目指します。
行政書士業務のあるべき姿
制度の本旨と現実の整合、完結までの継続対応
近年のAIの進歩には目を見張るものがあります。
上手に駆使すればあらゆる事柄の調査が容易となり、おそらく近い将来、私たちの業界でも、単純な許認可申請などはすべて当事者本人で申請できる日が来るでしょう。
しかし、AIを用いても完結しない業務が存在します。
行政書士の業務である、許認可手続き、権利義務・事実証明に関する業務には、完結させるために各人を取り巻く環境や制約を加味した総合考慮や、実行段階での人間の行動が必要となるものがあるからです。
殊に、法的地位や身分関係に基盤を置く業務、生涯に遭遇する頻度が低い業務では、理論上のロードマップを描くところまではできても、肝心の実行段階、業務の詰めに経験値が不可欠であり、事の成否を決める重大な要素となります。
それらの負託に応える存在となれるよう、日々精進しています。
行政書士事務所との関わりは、日常生活ではあまり身近ではないかもしれません。
ここで、弊所の提唱する伴走支援についてご説明します。理解を深めていただければ幸いです。
伴走支援
伴走支援とは、課題解決への支援プロセスをマラソン等の陸上競技に譬えた表現です。
すなわち、自走を基本としながらも、必要度に応じて専門家として関与の度合いを深め支援することを意味します。
具体的には、以下に挙げた例示のとおりです。
・自走型
調査や準備、実行の各段階をすべて自己完結、不明点のみを相談
・助言型
自走を前提としながら、不明瞭な箇所や不安な部分を都度支援
・部分依頼型
自走部分と依頼部分を分離し、課題解決プロセスの一部分のみ依頼 ※依頼部分は書面作成(申請等)に直結する必要があります。
・完全依頼型
相談段階から全面関与による支援
費用対効果を考慮のうえ、各人のおかれた事情に応じこれらを選択できるよう、弊所においては柔軟な対応が可能となっています。
当然のことながら、関与の度合いが低いほど費用は低廉となります。
他方、時間の捻出が難しい方や、自分できそうだが面倒だとお感じの方、一度の機会に失敗はしたくないとお考えの方、自分では対応できそうにないと判断された方には、それぞれの状況に応じた委任形態をご検討いただければと思います。
実務の具体例
公正証書遺言作成嘱託業務
例えば、公正証書遺言作成嘱託業務の場合、公証人への作成嘱託を要しますところ、事前の素案作成に始まり、公証人への提示・リーガルチェックを経て、問題なければ出頭日時を定め、必要経費や印鑑を持参のうえ証人2名同行で公証役場へ赴き、公証人に作成を嘱託することとなります。しかし、現実にはこの行間に記載しきれない程の様々な水面下での準備を要します。
まず、遺言全般に共通しますが、推定相続人の範囲確定を前提に検討を進めなければなりません。遺言内容は遺言者の自由意思ですが、遺言が効力を発する、すなわち、遺言者が亡くなり被相続人となった遺言内容実現の段階での阻害要素を排除しておくため、遺留分侵害額請求の有無と想定額をあらかじめ要素化して検討しておく必要があるのです。そうでなければ、遺言者の意思を完全に履行することがかなわず、結果として遺言者に不本意な結末となってしまいます。
ここで、相続人の範囲確定と聞けば、さほど難しくないのではないかと感じる方もおられるかもしれませんが、現実には遺言者の出生(遅くとも15歳以降)から現在までの戸籍等の裏付け資料をすべて取り寄せて疎明する必要があります。婚外子や前婚での子など、推定相続人となり得る者の有無、遺言時点で生存しているか否かを代襲相続の可能性まで含めて検討する必要があるからです。
また、遺言内容に即して財産帰属を実行する遺言執行者を定めておくと有益ですが、その検討にも細心の注意を要します。殊に、遺言内容が相続人以外の者へ不動産を遺贈する内容を含む場合は、対抗要件として登記を具備する必要があるところ、原則、遺贈義務を引き継いだ相続人全員との共同申請となり、協力を得られない場合を想定して遺言執行者の指定をしておくことが必須となります。その他、相続人に対して特定財産を相続させる旨の遺言を行うも、その評価が法定相続分を超えた部分については対抗要件の具備を要するため、受益相続人がそれらの手続きに不慣れで放置することのなきよう、遺言執行者を定めておくことが望まれます。
遺言内容の表現については、相続させる旨、遺贈する旨等の代表事例が知られているところ、いずれの表現を用いるべきかの検討も要します。
相続させる旨の遺言は遺産分割の方式を定めたものとされ、全部を相続させる旨の遺言であれば、相続財産中の不動産につき受益相続人単独での所有権移転登記が可能です。その他、金融資産の解約ないし名義変更も単独で可能となります。
しかし、遺産の2分の1を相続させる旨などの遺言であれば、相続分の指定をしたに過ぎないと解され、相続人間でさらなる遺産分割を要し、結果として相続人に煩瑣な手続きが求められ遺言者の本意に沿ったとは言えない結末となり得ます。
さらに、遺贈についても包括遺贈か特定遺贈とするかについて、放棄の自由を与える観点からも慎重な検討が求められます。
遺言段階で保有する財産については、その種類ごとに金額や評価額を証憑に基づき明確化し一覧表にまとめておくことが必要です。遺言内容を検討する資料となるばかりでなく、実務上は公証人手数料の算定根拠ともなるからです。
公証人との折衝においては、あらかじめ作成した素案のほか、これらの資料すべてを事前提示して準備を進めていただきます。公正証書遺言に明示する財産の表記につき、一言一句相違があってはならないからです。なぜなら、遺言が効力を生じた際には遺言者はすでに亡くなっており、訂正が効かないからです。そのため、何度も何度も折衝を重ね、完全体となるよう準備を進めます。
また、遺言に付言事項として遺言者の思いを記載しておくことも、効力発生後の紛争を回避する重要な効果が期待できます。遺言書は相続財産の帰属を定めることを目的で作成されるため、財産帰属に直結しない事項を記載しても法的には効力がないものとされてはいますが、なぜこのような遺言内容を定めるに至ったのか、その心情やおかれた環境などを丁寧に記載し相続人に理解を求めたことで、紛争を回避し円滑に遺言内容を実現できたたことがありました。遺言が財産帰属を前提としている以上、法定相続分を不利に変更された者へのケアが重要となるからです。また、公正証書遺言での付言事項に葬儀の宗旨、規模、納骨の場所や方法など、遺言者の意向を信条として記載しておくことで、別途の死後事務委任契約を締結せずとも、意向通りに死後事務が執り行われたケースもあります。このように、付言事項の検討も遺言作成における重要な要素となります。
公正証書遺言作成業務1つを取り上げてみても、これだけ多様かつ重層的な検討を要します。個人の尊厳を人生の最終段階まで保持できるよう、法が遺言制度を定めた本旨がここに垣間見れます。その本旨を実行段階で阻害することのないよう、幾重にも慎重な準備と検討が必要となるのです。
遺産整理業務
また、遺言が作成されないまま相続が発生した場合は、遺産分割の手続き、実現段階となる遺産整理手続き、その実行者となる遺産整理受任者の指定を経て、財産帰属に至ります。
この場合も、先に述べた遺言作成と同様、まず相続人の範囲確定を要します。すでに相続が開始しているため、推定ではなく法定相続人の範囲を確定することとなります。被相続人の死亡が記載された戸籍から出生(遅くとも15歳)まで遡り、一連戸籍を整序します。被相続人の除票も取得しておきます。その他、見知らぬ相続人に連絡する場合は、通知に備え戸籍の附票も取り寄せます。
また、後の遺産整理を円滑に遂行する準備として、官公署に提示する前提で法務局に法定相続情報一覧図の作成申出を行い、法定相続情報一覧図を取得しておきます。手続きを予定している金融機関が複数の場合は、複数通を取得しておきます。
遺産の範囲確定は、知れたる財産から順に調査し、遺言作成時と同様、金額や評価額を一覧表にまとめ、分割協議の資料とします。また、債務の調査には信用情報機関3社への照会で取り寄せた資料を準備する必要があります。どのような債務が潜んでいるかわからないからです。
それらを俎上に分割協議を任意で行い、まとまれば分割協議書を作成、各人が署名および実印での捺印を行い、印鑑証明書を末尾に添付します。分割協議書は、すべての相続財産を対象に1通作成しても、個別の相続財産ごとに作成しても、いずれの場合も効果に差異はありません。銀行預金等の金融資産の解約や取得者への名義変更には、代表相続人を選定のうえ、その者による手続完結を求められることが一般的ですが、多くの場合は不慣れな事情や時間費消を回避する要請から、相続人全員から選定された行政書士等が遺産整理受任者となり、金融機関との折衝を重ね、帰属を実現します。なお、不動産の帰属について、所有権移転登記等は司法書士の業務となります。
他方、任意での分割協議がまとまらない場合は、他の相続人を相手方として、管轄の家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立て、調停の場での解決を図ります。調停が不成立の場合は、審判に移行し、異議があれば抗告等に進みます。また、共有を定められた財産については、地方裁判所への共有物分割訴訟を別途提起することとなります。これらの手続きについては、弁護士のマターとなりますので、詳しくは身近な弁護士にご相談ください。
調停等の裁判手続で分割内容が定まれば、任意での分割協議後と同様、遺産整理手続きに進みます。
結びに
いかがでしょうか。
実務のリアルを少しは感じていただけたものと思います。
とらえ方は様々あるものと思料しますところ、皆様のご意向に沿って弊所が一助となる余地は十分にあろうかと考えています。
人生で遭遇する頻度が低く、それでいて失敗したくない重要な手続きについては、ご自身で時間をかけて検討されるよりも、専門家に聞いた方が早くて確実なことも多いものです。事案の見通しが知りたい、課題解決の糸口を見つけたい、との相談でも構いませんので、一人で悩まれている方はお気軽にご相談ください。
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